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Part II:「エスニック・クレンザー(民族浄化剤)」(80)
第62章 エスニック・クレンザー(民族浄化剤)(5) 少女の名はルル(2/3)

彼女は受診データを取り寄せた結果、成人女性のほとんどが50歳以下であり、老年女性が含まれていない事実に驚いた。軍の管轄と言うことで念のため父親の将軍に聞いてみたが、父親からは、すでに軍役を離れて久しく、また医療関係のことなど全く分からない、と木で鼻をくくったような返事がかえってきただけであった。
彼女はしばらく前、父親が自宅で軍医総監と何やら相談し、その直後に彼女と同じ病院のジルゴが訪ねて来たことはすでに承知していた。噂好きの姉が言わずもがなにそれを話してくれていたからである。シャロームは何やら陰謀めいたものを直感したが、あくまで自分で確かめたことしか信じないのが科学者としての彼女の流儀であった。
シャロームはN市の知り合いの診療所の一角を借り、仕事の合間を縫って患者の診察と病理検査を行った。同じ病院で働く『ドクター・ジルゴ』が噂を聞きつけて彼女に根掘り葉掘り探りを入れてきたが、彼女はそれを無視して真理の探究に突き進んだ。
(続く)
荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)